旧龍言は、玄関から今のラウンジがあるあたりまで壁で細かく仕切られていて、見通しがよくありませんでした。写真の白い囲炉裏があるあたりも、壁に囲まれた細長い廊下が続き、窮屈な印象が否めませんでしたが、今回のリノベーションによって、壁を大胆に取り払うことで、開放感のある共有スペースが生まれました。建築家の蘆田暢人さんのアイデアで、柱をそのまま残しているので、旧龍言の古い時間とモダンデザインがミックスした、ちょっとおもしろい空間になっています。
classic棟の客室には、木材の間接照明があります。これは、リノベーションの際の廃材を再利用した照明です。古材なので一つひとつの形が異なっていて、これも古い建物の記憶のひとつとして見ていただけたらうれしいです。
快適さと地域らしさが、ゆるやかにつながっていること
最後に紹介したいのが、地域との「ゆるやか」なつながり。客室などのプライベート空間と、ラウンジやバーなどの共有空間、そして地域に開かれたパブリック空間がつながって、気分に合わせて籠ったり、交流したり、滞在のスタイルを選べること。何もしない贅沢を味わいたい旅も、人や暮らしとの出会いを楽しみたい旅も、どちらも満足できる懐の深さが、ryugonの特徴かなと思います。
訪れた旅先の暮らしに関心があっても、いざそれを体験するとなるとなかなかハードルが高かったりしますよね。そんな地域の暮らしと旅人をつなぐための場所が、ryugonの門を入ってすぐのところにある「土間」です。というわけで、プロジェクトメンバーの一人として、古民家+ホテルの魅力を紹介させていただきました。
ryugonクリエイティブディレクター
フジノケン
株式会社N37 代表
新潟県津南町を拠点に活動。日本の地方の魅了を世界へ発信することを目指して、地域や企業のブランディングを担う。2017年に松之山温泉温泉整備計画でグッドデザイン賞、2018年に雪国観光圏のブランディングでジャパンツーリズムアワード大賞。企画演出を担当した「龍言からryugonへ」は、Zagreb TourFilm Festival Best Filmなど国際的な映像フェスティバルで7つの賞を受賞。